下町のえんぴつやさん

綴る作業をするたびに気づく、内向的なわたし。

第21話 目を背けてはいけないもの

昔からジブリの映画が大好きだった。

 

 

父方の祖父母の家に泊まりに行って、

寝る時間になると、

 

祖母は姉と一緒にサスペンスドラマを見て、

祖父はわたしに付き合って毎晩ジブリ映画を一緒にみてくれた。

 

 

 

 

となりのトトロ」とか

ホーホケキョ となりの山田くん」とか

(意図せず「となり」シリーズ笑)

 

ほっこり映画が好きだった。

 

 

 

 

わたしは同じ映画を

何度も、何度も、何度も何度も、観てしまう。

 

トトロは100回を超えていると思うし、

ハリーポッターシリーズも、

何周したかわからないくらい。

 

 

 

結末がわかっている安心感と、

大切な何かを見落としているような焦燥感。

 

見続けるのはそれが理由だ。

 

 

 

 

 

 

 

祖父はほとんど何も言わずに

映画を見てくれていたが、

 

「たまには、ちゃう映画もみたらどうや?

ほら、これもジブリやねんで。」と言われて

 

もののけ姫

天空の城ラピュタ

風の谷のナウシカ

といった、

大人になった今なら「名作」と思うそれらを

一緒に観ようと試みてくれた。

 

 

 

ただ、全部怖かった。

 

ラピュタはかろうじて観ることができた。

でも武器が多いし、人が死ぬし、

ムスカの目が怖かった。

 

 

 

 

もののけ姫なんて論外だ。

開始5分で化け物の中の化け物が

森の中から出てくる。

 

(えっ、身体からなんか噴射してる……)

と思ったのを忘れてないし、

 

血まみれのイノシシや

喋る巨大な犬。

アシタカは鉄砲で胸を貫かれ、

サンは口で血を吸う。

 

ただただ、怖かった。

 

 

 

 

 

ナウシカは、

"ティト"と名付けられた動物は

かわいいなあと思っていたけど、

 

巨大なダンゴムシ(王蟲)と

巨大な化け物(巨神兵)が

トラウマだった。

 

 

保育所で、

友達と一緒になってダンゴムシを大量に集めて

掘った穴に入れて埋めたりしていたので

(子どもって残酷・・・)

王蟲の襲撃はわたしにとって脅威だった。

 

 

とにかくなんであんなに虫が出てくるのかがわからず、

率先してみることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そういうわけで、

わたしはトトロと山田くんに

となりにいてもらうのが好きで

 

結局祖父のとなりにも

トトロと山田くんがいる羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

そんな風に映画をみながら寝る機会は

両親の離婚によって無くなってしまうけれど、

 

 

小学4年生になれはわたしも

自分でビデオの再生ができるようになっていて、

 

鍵っ子だったわたしは

部活で遅くなる姉の不在をいいことに、

ジブリ映画に没頭した。

 

 

 

 

その頃にはもう、

ナウシカもののけ姫も怖いとは思わなかったけど、

 

話はやっぱりよくわからなくて、

それでも何かを見落としてる焦燥感を

解消しようと見続けた。

 

 

 

 

 

大人になるにつれて、

色んな経験をして

色んな価値観を知って、

 

こんな風に生きていきたいなというのが明確になると、

 

子どもの頃親しんでいたものに対して

懐かしさを感じるようになる。

 

 

 

 

 

ジブリ映画が映画館でやってる!

と情報が入った時に絶対行きたいと思った。

 

 

王蟲が怖いから、と

見るのを避けていた「風の谷のナウシカ」を

絶対みたいと思った。

 

 

 

 

 

あんなにも怖かった王蟲巨神兵が、

 

大人になったわたしにとって

“怖くて目を背けたくなるもの”

ではなく

“絶対に目を背けてはいけないもの”になっていた。

 

 

 

 

武力で押さえつけようとする人。

住む場所を奪われて怒っている生き物。

 

 

人間は昔から、自分よりも強い何かに怯え、それを排除しようとしてきた。

 

それによって今の時代を生きるわたしたちは、

快適な暮らしを送れている。

 

 

 

 

 

 

 

もののけ姫」で、

 

 

シシ神様の首取りのために軍をなすエボシに対して、

アシタカが

たたらがよその国の侍に襲われたことを伝えに行く。

 

「森とたたら場、双方生きる道はないのか!」

とアシタカが叫ぶ。

シシガミ様の首をとる前にやることがあるやろ!と。

 

首を取る、という行為は人間界のルールなだけで、

神様であるシシガミ様には結局それは通用しない。

 

 

 

 

ナウシカも、アシタカも、

ただ自然と共に生きたいと思っていて、

それができるはずなのに

 

なんで目先のメリットしか考えないんだろう

って、

思ってると思う。

 

 

 

自然には抗えない。

今でいうと、どんなに脅威的なウイルスでも排除できない。

 

 

だから、どうやって生きていく?

という話し合いが必要。

 

ナウシカも「待って!話を聞いて!」って言うし、

アシタカも「話がしたい。」って言ってる。

 

 

 

地位の特権とか、知識の押し付け合いじゃなくて、

自分の気持ちを話すってすごく怖いけど、

 

人ってそれができる生き物だから。

言葉という明確な力を持っているから。

 

そこから逃げちゃいけないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブリ作品には随分と助けられてきた。

目が覚めたら

千と千尋の世界が広がってないかなあ、とか、

明日もしかしたら、キキみたいに空を飛べるかもしれない、とか、

いろんな想像をして育ってきた。

 

トトロは山の奥で眠っているだろうし、

立ち入り禁止の荒地にはハウルの城があるんだと信じている。

 

 

 

 

そんな日々です。

今日、不思議な世界をみました。

 

 

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この運転士さんはもしかしたら

とんでもない世界に連れて来てくれたのかもしれない。